今回は、高「LDLコレステロール」血症の治療基準についてお話します。
これまでの研究結果からLDLコレステロールは下げれば下げるほど心臓病や脳梗塞などの動脈硬化を減らすと考えられています。下げたことによる害はほぼありませんので、治療するコスト(治療費)と効果を比較して治療基準値が設定されています。(注:コレステロール治療に異議を唱えているひとも、治療が不要とはいっていますが下げると害があるとはいっていないようです。)
しかし最近になり、LDLコレステロールが高くても動脈硬化の進行が遅い方がいることがわかってきました。
これまでコレステロール値が高い方は、家族歴の有無(ご両親や兄弟で心臓や血管の病気があるか)、喫煙、高血圧、糖尿病、加齢が動脈硬化の進行に大きく影響していることがわかっていましたが、これまで考えられていた以上に性別が重要な要素であることが最近の研究データで示されました。
この研究の結果から、閉経前の女性で、LDLコレステロール値は160mg/dl以下の場合、家族歴がなく、喫煙歴がなく、高血圧、糖尿病のいずれも合併していない場合は、動脈硬化疾患の発生率が低いため治療は不要と考えられます。その一方で閉経後の女性の動脈硬化は男性と同様に進行すると考えられていますので治療開始を検討するべきです。(研究データでは10年後までの合併症の発生率は極めて低かったとの結果ですが、なんといっても女性は長寿ですので10年では不十分ではないでしょうか。)
鈴木クリニックでは、閉経後の女性については、血液検査の数値のみではなく、家族歴(両親や親類の動脈硬化関連の病気)や血管年齢(血管の硬さ)や頸動脈エコー(血管へのコレステロール沈着)の結果を参考にして、動脈硬化度を判定した上で治療をおこなうかどうかを決定するようにしています。