認知症の方が、その人らしい生活を送るためには、ご家族が認知症を理解し上手く対応することが必要です。
認知症の方は皆「何もわからなくなってしまう」と考えられがちですが、そういった症状になるのはかなり進行してからであり、病初期には感情や心身の力は豊かに残っていることがわかってきました。これらを理解した上で、その気持ちに配慮した接し方を紹介します。
① 興奮したりかん高い声で話すと、不安や混乱を招くことがあるので、声のトーンは低めにゆっくり、はっきりと話しかけましょう。
② もし間違ったことを言ったとき、頭ごなしに否定すると、不安や混乱が高まってしまいます。まずは「そうだね」と受け入れ、話を聞いてあげることが大切です。
③ 例えば失禁した時に「トイレでするもの」と説得すると、萎縮したり反発してしまいます。また命令したり、叱るとプライドが傷ついてしまいます。なぜ失敗するのかを考え原因を取り除くようにしましょう。
④ できることは自分でしてもらい、やってもらったら「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えましょう。認知症の人に限らず、人の役に立っていることに喜びを感じるものです。
以上が認知症の方と接する際の基本ですが、その方々の個性に応じた接し方を心がける事も大切です。(看護師後藤)
今回は具体的に何度も食事を要求する場合の対応について紹介します。
認知症の方が直前に食事をしたにも関わらず「食べていない」と言って何度も食事を要求することがあります。その原因としては、食べたことを忘れてしまう、または脳の満腹中枢が侵されている、欲求不満を食べる事で満たそうとしている結果起こります。こういった場合、食事をした事を納得してもらうより、認知症の方が一時的に食事の事から気をそらすような工夫をしたり、これから食事が食べられる、と安心するような言葉がけをした方が効果的な事が多いようです。
具体的には、
① 時計の針を指でさし、次に食べられる時刻を示してみましょう。
② 「今支度をするので待っていてね」と言って台所に入り、食事の支度中である事を話してあげましょう。
③ 「一緒に材料を買いに行きましょう」と言って外へ連れ出し散歩をしましょう。また実際に買い物に行ってもよいでしょう。
④ 器を小さくし、少量ずつとりわけ、おかわりしてもらい心の満足を得てもらいましょう。 ⑤ どんなに工夫しても食事へのこだわりが強い場合は、少量のお菓子を渡し、一緒にお茶を飲むのもよいでしょう。 以上が食事の要求に対応する方法ですが、基本としては認知症の方の要求、訴えをうけとめてあげる、ということが大切です。 (看護師 後藤)
今回は認知症の方が徘徊する場合の対応について紹介します。 徘徊とは、当てもなく歩き回っている状態の事をいいますが、徘徊している本人には本人なりの理由がある事が少なくありません。
実例をあげて対処の方法を考えてみましょう。 例えば「会社に行くから」「買い物をしないといけないから」という理由ででかけようとする人がいます。そういった場合は、今日は日曜日ですよ。」「〇〇さんが買い物してきてくれたから大丈夫」と声かけすると、すんなり聞き入れてくれることがあります。
また自宅を他人の家だと思い込んでいる場合は、「自分の家に帰る」と言って徘徊を始める事もあります。そういった場合は「家の人が迎えにきてくれるそうです」「夕飯を食べていって」と言って待たせている間に外出する事を忘れるようしむけるのもひとつの方法です。
認知症の方を一日中、家に閉じ込めておくとストレスがたまってしまうので、介護者が徘徊につきあってみるのもよいでしょう。一緒に歩き、話をしている事で心の満足が得られる場合もあります。認知症の方のなかには一緒に歩くことに対し、「子供扱いされたくない」「監視されているようで嫌だ」などの理由から、介護者の同行を拒否する人もいます。このような時は、少し距離をおいて後ろからそっとついて行きましょう。
どんなに介護者が気をつけていても、一人で外出してしまうこともあります。認知症の方の安全を守るため、地域の方や交番などに理由を話し、本人が一人で歩いているところを見かけたら引き止めてもらい、家族に連絡してもらうよう頼んでおき、住所・氏名・電話番号を記した名札をポケットやバックに入れておきましょう。また、洋服の裏や帽子のつばの裏に名札を縫い付けておきましょう。お守り袋の中に入れておいたり、縫い付けておくのもよい方法です。
認知症の方の徘徊は、家族にとっても大きなストレスとなります。家族だけでかかえこむのでなく、医師や介護のプロに相談することも大切です。 (看護師 後藤)