冬になると体がかゆくなりやすい方が増えてきます。多くはドライスキンの状態で皮脂の減少により角層(皮膚表面近くの部分)のバリア機能が障害され、些細な刺激でも掻痒感(かゆみ)を感じやすくなっていることが原因です。
皮脂が少ないと角層の水分の蒸散を防いだり、外部の機械的、化学的刺激から皮膚を保護する働きが低下します。このためさまざまな環境因子の影響を受けやすくなってかゆみが発生するのです。そこで、正しいスキンケアを行う必要があります。
<対策>
1)保湿への配慮
① 入浴やシャワー後は乳液やクリームなどを塗りましょう →石けんで失われた皮脂を補ってくれます。加齢に伴って皮脂の分泌力が低下し、皮脂膜の再生に時間がかかるようになるため、石けんを使いすぎないことが大切です。
② 保湿効果のある入浴剤を使用してみましょう →失われた水分保持成分を補給します。(例:市販のもので、ビオレUやウルモアなどがあります。)
③ 保湿薬を塗布します(例:市販ではケラチナミン尿素配合クリームやユースキンクリームなどがあります。病院ではヒルドイドソフトやウレパールなどがあります。)
→大気中の湿気を積極的に角層に取り込む保湿作用があります。入浴後そのままにしておくと皮膚は乾燥してしまうので、乳液や保湿薬は、入浴後5分~15分以内の皮膚が十分に湿潤しているうちに塗布すると効果的です。
2)刺激を避ける
① 石けんは香料の強いものはなるべく避け、弱酸性の低刺激の石けんを使用するとよいでしょう。石けんやシャンプーの使用後はよくすすいでください。残っているとそれが、刺激となり皮膚症状を悪化させることがあります。汗やほこりなどによる汚れはお湯で洗うだけでも落ちるので、特に冬は石けんの使いすぎに注意しましょう。アトピー性皮膚炎の方は、夏や運動の後など汗をかいたあとは必ずシャワーを浴びましょう。
→ナイロンタオル、ボディブラシなどによる摩擦、刺激の強い石けんの使用は必要以上に皮膚を傷つけてしまいます。やさしくなでるように洗いましょう。
② 湯の温度は36~37度程度のぬるめにしましょう。熱すぎるとかゆみを誘発します。
3)生活環境を整える
① 温度・湿度の調節
適切な室温を保つこと、低湿状態を改善するため、加湿器を使用し、50~70%に保つ →身体が温まると、血管が拡張し、発汗したり皮膚の水分の蒸発が促進され皮膚が乾燥してしまいます。
② 衣類、寝具の工夫
吸湿性、通気性の優れた木綿の衣類、肌着がいいでしょう。
→化学繊維やウールは皮膚への刺激が強いので避けるようにしましょう。身体を締め付けたり縫い目がかゆみのある部分に当たるとかゆみを増強させてしまいます。
③ 食物、栄養摂取
唐辛子などの香辛料、アルコール、熱い飲み物、食べ物の摂取は控えましょう。 →刺激物は血管を拡張し、発汗を起こしかゆみを誘発させます。
④ 睡眠への援助
かゆみのある部分やそれ以外の部位を氷枕やアイスノンで冷やすことで、かゆみをまぎらせることができます。
<掻破(かき傷)の予防>
① 皮膚に与える刺激を少なくするため、爪は短く切りましょう。
② 掻いても皮膚を傷つけないように特に夜間は無意識で掻くこともあるため、夜間だけでも木綿の手袋をして寝るとよいでしょう。
<まとめ>
かゆみが非常に強く赤みやざらつきなどの皮膚の状態に変化があれば、まずは内科でもよいので医師に相談することをお勧めします。市販の薬剤にもよいものがありますが、どれを使えばよいのか判断するのは容易ではありませんし、また価格も病院を受診した方が安いことが多いのが現状です。 (看護師 二宮)