一般家庭で使用する油脂はバターを除くとサラダ油やごま油などの植物油を使うことがほとんどだと思います。最近ではスーパーやドラッグストアにいろいろな種類の植物油が並んでいますが、健康志向の高まりを受け、オリーブ油やシソ油、亜麻仁油などが注目されています。それではそれぞれの油にどのような特徴があるのでしょうか?
食品としての油の性質はそれを構成する脂肪酸によって決まります。脂肪酸はバターなどに多い飽和脂肪酸と植物油に多い不飽和脂肪酸に大別され、さらに不飽和脂肪酸は化学構造の違いから、<オメガ3系><オメガ6系><オメガ9系>に分けられます。
1. オメガ3系のαリノレン酸はシソ油やエゴマ油に多く含まれており、脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化症の発症率を減らす可能性が指摘されており健康によいと言われていますが、熱で劣化しやすいので調理方法や保存方法に注意が必要です。
2. オメガ6系のリノール酸はごま油や大豆油・ベニバナ油に多く含まれており、最終的に体内でアラキドン酸という脂肪酸に変化し、過剰摂取すると炎症や血栓ができやすくなることがわかっています。日本人の食生活は欧米化により、オメガ6系のリノール酸を多く摂取しがちなので注意が必要です。
3. オメガ9系のオレイン酸を多く含むオリーブ油やキャノーラ油(なたね油)は血栓を作りやすいとの報告もなく、熱で劣化しにくい点で健康によい可能性があります。
最近はテレビやインターネットでいろいろな情報が得られますが、確実な効果がわかっている食事療法は多くありません。たとえばリノール酸のように「健康によい」といわれていた食品でも、後に否定され逆効果であったとされるものもあります。つまり「健康によい」といわれているものでも、そればかりを摂っていてはトラブルの原因になるかもしれないと考えておく方が安全でしょう。
はっきりわかっていることは、どんなに「健康によい」油も1グラム9キロカロリーと高カロリーです。高カロリー食は体内でのLDLコレステロールの合成を促進しますので、結果として動脈硬化の原因のひとつであるLDLコレステロールの増加につながります。いくら「健康によい」油でも多めに摂った方がよいわけではありません。
健康維持の為の食事療法のひとつの考え方として、食事は栄養摂取の為だけにするものではありません。新鮮な食材(例:古い油はまずく新しい油はおいしい)を使うようにして、おいしく食べることを意識すること、食品の種類がかたよらないようにいろいろな食べ物を摂取することが結果として栄養学的にもよい食事療法といえるのではないでしょうか。